RB7daysの開発に至るまで

RB7daysの開発に至るまで
                            京都府立医科大学 創薬センター 酒井 敏行
 
 私事になるが、高校生の時に弟を骨肉腫で亡くし、将来がんで亡くなる方を少なくしうる研究者を志した。京都府立医科大学を卒業し、大学院を修了した後に、初めてのがん抑制遺伝子として発見されたRB遺伝子をクローニングしたハーバード大学のTed Dryja博士の研究室に留学した。帰国後、RB遺伝子が過剰メチル化のみで失活することを見いだし、突然変異のない発がん機構を初めて証明することができた。また、「RB活性化スクリーニング」という新規のがん分子標的薬のスクリーニング方法を考案し、画期的抗がん剤トラメチニブ(商品名メキニスト)を発見した。トラメチニブは進行性BRAF変異メラノーマ、非小細胞肺がん、甲状腺未分化がん他多くの臓器のがんにおいて、初めてのMEK阻害剤として承認され、世界中で進行がん患者をも完治させうる画期的新薬として使用されることになり、Drug Discovery of the Yearに日本で初めて選ばれた。
 RBは多くの臓器の発がん抑制に有用であるだけでなく、基礎実験により、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患、種々の炎症性疾患、痴呆、アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経性疾患にも抑制的に働くことから、RB遺伝子は所謂健康を守る「ヒーロー遺伝子」と考えられる。RBを活性化させる予防戦略が重要と考えたが、薬剤では副作用の懸念と、継続にかかる費用の面で予防には適さないことから、手軽に飲用可能な予防飲料の開発を考案した。世界中の果実を精査した中で、オーストラリアの先住民アボリジナルが飲用するカカドゥプラムと、日本人にも馴染みのあるザクロの果汁がRB活性化能を有することを発見し、がん予防効果が知られている乳酸菌との混合飲料とした。
 今回、築野食品と、カカドゥプラム、ザクロ、乳酸菌に加え、がんや動脈硬化等に予防効果があるとされる、リンゴ、フィチン酸、イノシトールを混合した、「RB7days」という商品名の果実飲料を創製した。ちなみに、果物には、がんや動脈硬化性疾患に対する予防効果があることが広く知られているが、果糖をとりすぎると、逆に種々の疾患のリスクが高くなることが知られている。そのことから、RB7daysは、糖度(甘さの度合い)を通常の果実飲料の半分程度に抑えることで、カロリーも1缶あたり44 kcalと低く、極めてヘルシーな飲料となっている。そのため、毎日冷やして飲んでいると、多くの人が健康的で美味しく、毎日楽しく飲めると感じている。カカドゥプラムが極めて高価であるため、通常の果実・野菜飲料と比べると若干割高となっている。そのため、家族で飲用する場合などは、毎日でなくとも、2日に1本、もしくは3日に1本であっても、継続して飲用すれば、十分な効果が期待できると考えている。がんや動脈硬化は20歳台から始まることもあるので、できれば若年齢から是非、愛飲していただきたい。ヒトに対する臨床試験はこれからなので、先ずは長期間販売することができて、科学的に実証することが重要と考えている。
 RB7daysを飲むことで油断した生活習慣を送ることは好ましくないので、通常通り定期検診を受けることと、禁煙、節酒、適度な運動、バランスのとれた食事と適正体重の維持に留意していただきたい。その上で、RB7daysを愛飲していただければ、健康寿命が必ず延びると信じている。